KEY POINTS — この記事の要点
採用の定石は5つ。誰に来てほしいかを先に決め、その人にとっての魅力を言葉にし、1人ずつ短く書き、返信を待たせず、送信数・返信数・予約数で直す。
人材要件を関係者で共有するほど採用した人の評価が高い(日本の企業176社の研究)。面接や企業の対応で「入社したくない」と思った理由の2位は「求人情報と面接の話に齟齬があったため」33%(転職経験者への調査)。
選考では、同じ質問と同じ基準で評価する構造化面接が、入社後の仕事ぶりをよく言い当てる(海外の研究で妥当性 .42。構造化しない面接は .19)。
採用の定石とは?5つの一覧
採用の定石とは、採用で一般に成果を分けるとされる手順です。特別な才能が要るものではありません。「誰に来てほしいか」を決めてから、その人に届く言葉で、1人ずつ、待たせずに声をかけ、結果の数字で直します。
どれも当たり前に聞こえます。ただ、忙しい会社ほど、どれかが抜けます。採用に詳しい担当者がいない会社でも、この5つを順に押さえれば、どこでつまずいているかが分かります。
| 定石 | 抜けると起きること | 根拠 |
|---|---|---|
| 誰に来てほしいかを、先に決める。 | 面接官ごとに見るところが違い、合う人を落とす | 日本の企業176社の研究 |
| その人にとっての魅力を、言葉にする。 | 話が違うと思われ、面接の後に気持ちが離れる | 転職経験者への調査(日本) |
| 1人ずつ、短く書く。 | 誰にでも送った文面と見抜かれ、返信が来ない | 海外の媒体の分析 |
| 待たせない。 | 返事を待つ間に、他社の選考が進む | 企業293社への調査(日本) |
| 数字で直す。 | どこで減っているか分からず、同じ失敗を続ける | 公的な出典なし(運用の考え方) |
定石1 誰に来てほしいかを、先に決める。
最初に決めるのは「どんな人に来てほしいか」です。決めた条件を、社長・現場の責任者・面接に出る人の全員で同じものとして持ちます。文面も面接も、ここから決まります。
なぜそうするか
リクルートワークス研究所の研究では、東京証券取引所第一部(当時)に上場する企業の人事部に調査し、176社から回答を得ました(2015年8〜10月)。分析の結果、「人材要件の共有は,新卒採用における採用者の能力評価と中途採用における採用者の能力評価と適応評価に有意な影響を及ぼすことが分かった」とされています。人材要件とは、採用したい人の条件のことです。評価は、各社の人事部が最近2〜3年の採用を振り返って答えたものです(出典: 碇邦生「人材要件の共有が選抜指標と採用成果に及ぼす影響」リクルートワークス研究所『Works Review』Vol.11(2016))。
同じ研究の聞き取りでは、条件を先に決めていても、面接担当者の急な変更などで「選考基準にバラツキが生じてしまう」という課題も語られています。決めるだけでなく、関係者で同じものを持つことが要点です。
やり方
- 必須と歓迎を分ける: 「無いと仕事ができない条件」を必須、「あれば良い・入社後に伸ばせる条件」を歓迎にする
- 必須は少なくする: 必須が多いほど、当てはまる人がいなくなる。本当に外せないものだけにする
- 条件の幅を先に決める: 年収・勤務地・働き方で、出せる幅と出せない線を決めておく
- 1枚の紙にして共有する: 社長・現場・面接官が、同じ紙を見て選ぶ
よくある失敗
- 欲しい条件を全部必須にして、対象者がほとんどいなくなる
- 条件が社長の頭の中にだけあり、面接官ごとに見るところが違う
- 「良い人がいれば」と決めずに始め、誰に送るかが毎回ぶれる
定石2 その人にとっての魅力を、言葉にする。
条件が決まったら、その人から見て何が魅力かを言葉にします。会社が言いたいことではなく、候補者が知りたいことです。言葉にするのは事実だけにします。
なぜそうするか
エン・ジャパンが『エン転職』の利用者10,305名に聞いた調査(2022年6月28日〜7月26日)では、転職経験者の72%が、面接や企業の対応で「この会社には入社したくない」と思ったことがあると答えました。その理由(複数回答)のトップ3は、「面接官の態度が不快だったため」49%、「求人情報と面接の話に齟齬があったため」33%、「想像していた仕事とずれがあったため」30%です(出典: エン・ジャパン「『エン転職』1万人アンケート(2022年8月)「企業・面接官対応の応募者への影響」調査」(2022年8月19日発表))。
2位と3位は、どちらも「聞いていた話と違う」です。魅力を盛って書くと、返信は来ても、面接で気持ちが離れます。
やり方
- 候補者が気にすることから書く: 仕事の中身、任される範囲、年収、働き方、一緒に働く人
- その人の経歴とつなげる: 「前職の経験が、ここでこう活きる」と書ける魅力を選ぶ
- 事実だけで書く: 残業・休日・年収は、実態の数字で書く。決まっていないことは書かない
よくある失敗
- 「アットホームな職場」のように、どの会社にも当てはまる言葉で済ませる
- 求人と面接で話が変わる(同じ調査の回答例に「残業ほぼ無しと記載していたが、面接で残業が月20~30時間と聞き、辞退しました」がある)
- 会社の歴史や理念の説明が長く、仕事の中身が分からない
定石3 1人ずつ、短く書く。
スカウトは、相手の経歴を読んでから、その人だけの1通を書きます。長い会社紹介より、なぜあなたに送ったのかを短く伝えます。
なぜそうするか
海外の媒体 LinkedIn の分析では、1通ずつ送ったスカウトは、一斉送信より返信率が約15%高い結果でした。原文は「InMails that are sent individually see response rates roughly 15% higher than InMails sent in bulk.」です。同じ分析で、400字未満の短いスカウトは平均より返信率が22%高く、1,200字を超える長いものは11%低い結果でした(出典: LinkedIn Talent Blog「How to Improve Your InMail Response Rate, According to LinkedIn Data」(2022年5月19日))。
数えたのは、2021年5月〜2022年4月に世界の事業会社の採用担当が送った数千万通で、人材会社は除き、30日以内の返信を数えています。字数は英文の字数なので、日本語の文字数とそのまま比べることはできません。日本の媒体の数字でもありません。
やり方
- 冒頭で、経歴のどこを読んだかを書く: 「◯◯での△△の経験を拝見しました」
- 条件を書く: 年収・勤務地・働き方が分かれば、候補者はすぐ判断できる
- 最初の一歩を小さくする: 「まずは30分、話を聞いてみませんか」
件名と冒頭の書き方はスカウト文の書き方に、返信率の測り方はスカウトの返信率の目安と上げ方にあります。
よくある失敗
- 同じ文面の名前だけを差し替えて送り、テンプレートと見抜かれる
- 会社の紹介が長く、肝心の「なぜあなたか」が最後まで出てこない
- 返信を増やそうと送る数だけを増やし、合わない人にまで送る
定石4 待たせない。
候補者から返信が来たら、早く答えます。面談の日程は、候補者が自分で選べるようにします。返信した直後が、候補者の関心が最も高いときです。
なぜそうするか
エン・ジャパンが『人事のミカタ』を使う企業293社に聞いた調査(2024年6月11日〜7月9日)では、直近1年以内に中途採用をした企業の85%が、選考辞退が起きたと答えました。選考辞退の対策をしている企業は52%で、その対策のトップ3は「書類選考後、通過者への連絡を早くする」85%、「面接日程を複数送り、選択できるようにする」76%、「応募者に、今後の選考の流れやお礼をメールで送る」60%でした(出典: エン・ジャパン『人事のミカタ』「「中途採用の選考辞退」実態調査」(2024年8月6日発表))。
対策の上位2つは、どちらも「待たせない」ための工夫です。
やり方
- 返信の担当と目安を、始める前に決める: 誰が、いつ確認し、何時間以内に返すかを決める
- 日程調整のリンクを使う: 候補者が空いている枠から自分で選べば、日程の往復が無くなる
- すぐ答えられないときも、先に一言返す: 「確認して明日までにお返事します」
- この先の流れを伝える: 面談の後に何があるかを先に書いておく
返信から面談までの減り方と打ち手は、スカウトの面談設定率を上げる方法にまとめています。
よくある失敗
- 返信を見る人が決まっておらず、数日だれも返さない
- 日程の候補をメッセージで出し合い、往復のうちに返事が途切れる
- 平日の昼の枠しかなく、働いている人が選べない
定石5 数字で直す。
最後に、結果を数字で見て直します。感覚で「最近反応が悪い」と言うより、どの段階で減っているかを数字で見る方が、直す場所がはっきりします。
なぜそうするか
この定石には、公的な調査の出典はありません。運用の考え方として示します。定石3の海外の分析でも、文面の長さや送り方で返信率は変わっていました。変わるものは、測れば直せます。
やり方
- 求人ごとに3つの数を取る: 送信数、返信数、面談の予約数
- 減っている段階を直す: 返信が少なければ対象と文面、予約が少なければ返信の速さと日程の決め方
- 一度に1つずつ変える: 2つ同時に変えると、どちらが効いたか分からない
- 数が少ないうちは、まとめて見る: 数十通の率は、数件で大きく動く
よくある失敗
- 送った数だけを見て、返信や予約の数を見ていない
- 職種の違う求人をまとめて見て、原因が分からない
- 数字を見ても、文面や対象を変えずに同じ送り方を続ける
選考は、同じ質問と同じ基準で
5つの定石で面談まで進んだら、選考では、同じ職の候補者に同じ質問をし、同じ基準で評価します。この形の面接を「構造化面接」と呼びます。
なぜそうするか
選考の手法が入社後の仕事ぶりをどれだけ言い当てるかは、「妥当性」という0から1の数で比べられます。1に近いほど、選考の評価と入社後の評価がよく一致します。以下は海外(主に米国)の研究で、1998年は Schmidt & Hunter、2022年は Sackett ほかのまとめです。「構造化なし」は、質問や基準を決めずに行う面接です。
| 研究 | 構造化面接 | 構造化なし |
|---|---|---|
| 1998年 | .51 | .38 |
| 2022年 | .42 | .19 |
2022年の研究は、過去の研究の数字の補正を見直したものです。数字は全体に小さくなりましたが、「Structured interviews emerged as the top-ranked selection procedure.」(構造化面接が、選考の手法の中で最上位になった)とされています(出典: Sackett, Zhang, Berry & Lievens「Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection」Journal of Applied Psychology(2022)、Schmidt & Hunter「The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology」Psychological Bulletin 124(2)(1998))。
面接は、候補者が会社を見る場でもあります。定石2で見たエン・ジャパンの調査では、「入社したい」と思った理由の1位は「面接官の人柄・印象が良かったため」65%、「入社したくない」と思った理由の1位は「面接官の態度が不快だったため」49%でした。
聞いてはいけないこと
厚生労働省は、採用選考を「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」を基本としています。本籍地や家族の職業などの「本人に責任のない事項」、宗教や支持政党などの「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」は、仕事の適性や能力に関係がないため、採用の基準にしません。基準にしないつもりでも、面接でたずねれば採否に影響し、就職差別につながるおそれがあるとしています(出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。
やり方
- 定石1で決めた必須の条件ごとに、聞く質問を決める
- 答えの良し悪しを、何段階で、どう採点するかを先に決める
- 面接官が変わっても、同じ質問と同じ採点表を使う
PINSCOUT では、5つをどう仕組みにしているか
PINSCOUT
PINSCOUT(ピンスカウト)は、面談の確定か、入社日の採用の成立のときだけ費用が発生する、完全成果報酬のAIスカウト代行です。5つの定石を、設計の手順と御社専属のAIに組み込んでいます。
- 誰に来てほしいかを、先に決める。 始める前に、必須と歓迎の条件を御社と分けて決め、御社専属のAIの設定に入れる。
- その人にとっての魅力を、言葉にする。 候補者に効く訴求を方針として決める。設定にある事実の外のことは書かない。
- 1人ずつ、短く書く。 経歴を読んで、その人だけの1通を書いて送る。
- 待たせない。 スカウトには日程調整のリンクが必ず付き、候補者が自分で面談を予約できる。返信の目安は、始める前に御社と決める(返信への対応は御社)。
- 数字で直す。 毎月、求人ごとの送信数と予約数を御社に報告する。御社の指摘とOKの出た文面は、担当者が設定に反映する。
定石1・2の設計は担当者が立案し、成果報酬に含みます。採否と最終の判断は御社です。選考の評価の基準づくりや面接は、採用支援(別料金)で頼めます。料金の数え方は料金ページにあります。
出典
SOURCES — 2026年10月31日に原文を確認
碇邦生「人材要件の共有が選抜指標と採用成果に及ぼす影響」リクルートワークス研究所『Works Review』Vol.11(2016): 東京証券取引所第一部上場企業の人事部への質問紙調査。176社から有効回答(回収率9.3%、2015年8月17日〜10月9日)。人材要件の共有は、新卒の能力評価と、中途の能力評価と適応評価に有意な影響
エン・ジャパン「『エン転職』1万人アンケート(2022年8月)「企業・面接官対応の応募者への影響」調査」(2022年8月19日発表): 『エン転職』の利用者へのインターネット調査。有効回答10,305名(2022年6月28日〜7月26日)。「入社したくない」と思った理由は転職経験者のうち、そう思ったことがある人の複数回答
LinkedIn Talent Blog「How to Improve Your InMail Response Rate, According to LinkedIn Data」(2022年5月19日): 海外の媒体の運営会社の自社データ。2021年5月〜2022年4月に世界の事業会社の採用担当が送った数千万通(人材会社は除く)。30日以内の返信を数えた。字数は英文
エン・ジャパン『人事のミカタ』「「中途採用の選考辞退」実態調査」(2024年8月6日発表): 『人事のミカタ』を使う企業へのインターネット調査。有効回答293社(2024年6月11日〜7月9日)。対策の割合は、選考辞退の対策をしている企業の複数回答。PR TIMES の発表の転載で確認
Sackett, Zhang, Berry & Lievens「Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection」Journal of Applied Psychology(2022): 選考の手法の妥当性の再推定。構造化面接 .42、構造化しない面接 .19(2021年にオンラインで先行公開)
Schmidt & Hunter「The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology」Psychological Bulletin 124(2)(1998): 85年分の研究のまとめ。構造化面接 .51、構造化しない面接 .38
厚生労働省「公正な採用選考の基本」: 採用選考の基本的な考え方と、適性・能力に関係のない事項の把握について
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