KEY POINTS — この記事の要点
スカウト代行という業態そのものを禁じる規定は職業安定法に無く、違法になるかどうかは、代行会社の関わり方(募集の代行か、求職の申込みを受けたあっせんか)と、それに応じた許可・届出の有無で決まる。
委託募集とは、労働者を雇おうとする者が、自社の従業員以外の者に労働者の募集を行わせることで、報酬を与える場合は許可と報酬額の認可、与えない場合は届出が必要とされている(職業安定法36条)。
厚生労働省の業務取扱要領は、求職者を探して就職を勧め、応じた人をあっせんする「スカウト行為」を事業として行う場合は職業紹介事業に含まれるとしており、企業は送信の名義・代行会社の役割・報酬の形・媒体の利用規約を確かめる。
スカウト代行は違法?
スカウト代行という業態そのものを禁じる規定は、職業安定法にはありません。法令が見ているのは、代行会社が「何をするか」です。企業の募集を代わりに行えば委託募集の規定(許可・届出)、求職の申込みを受けて雇用の成立をあっせんすれば職業紹介事業の規定(許可)の対象になります。
| 代行会社がすること | 関係する規定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 企業の名義で、企業の募集を代わりに行う | 委託募集(報酬ありなら許可+報酬額の認可、無しなら届出) | 法36条 |
| 求職の申込みを受け、求人者との雇用の成立をあっせんする | 職業紹介事業(許可) | 法4条・30条 |
| 企業の名義・企業のアカウントで、文面の作成と送信操作を代行する。選考・採否は企業が行う | どの規定に当たるかは、契約と運用の実態で整理する | ─ |
つまり「違法かどうか」は、業態の名前ではなく、関わり方と、それに応じた手続きの有無で決まります。以下、条文と厚生労働省の要領に沿って順に見ます。
なぜスカウト代行で法律が話題になるのか
スカウト代行で法律が話題になるのは、「企業の代わりに、第三者が候補者に声をかける」形が、職業安定法の「委託募集」や「職業紹介」と関わるためです。どちらに当たるか、当たらないかで、必要な手続きが変わります。
この記事では、厚生労働省の業務取扱要領と職業安定法の条文に書かれていることを、原文に沿って整理します。特定の契約が法令に適合するかどうかの判断を示すものではありません。個別の判断は、社会保険労務士・弁護士、または管轄の労働局に相談してください。
SOURCES — この記事の出典(2026年10月30日に確認)
職業安定法の3つの言葉
スカウト代行を考えるときに出てくるのは、「労働者の募集」「委託募集」「職業紹介」の3つです。
| 言葉 | 定義(原文) | 根拠 |
|---|---|---|
| 労働者の募集 | 「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」 | 法4条 |
| 委託募集 | 「労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集に従事させる形態で行われる労働者募集」 | 要領 Ⅲ1イ |
| 職業紹介 | 「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」 | 法4条 |
企業が自分の名前で候補者に「うちで働きませんか」と声をかけることは、「労働者の募集」です。それを自社の従業員以外の者に行わせると「委託募集」になり、求人と求職の間に立って雇用の成立をあっせんすると「職業紹介」になります。
委託募集とは?許可と届出の違い
委託募集では、受託者に報酬を与えるなら厚生労働大臣の許可と報酬額の認可が、報酬を与えないなら届出が必要とされています(職業安定法36条1項〜3項)。実務上の窓口は、募集する事業所の所在地を管轄する都道府県労働局です。
要領に書かれている手続きの要点は次のとおりです。
- 申請するのは募集主(企業)。ただし「許可等の申請手続は、募集受託者が募集主に代わって行うことができる」とされています
- 許可の権限: 自県外の募集で、1つの都道府県からの募集人員が30人以上、または募集人員の総数が100人以上なら厚生労働大臣、それ以外は都道府県労働局長
- 申請の時期: 都道府県労働局長の許可等は募集を開始する月の14日前まで、厚生労働大臣の許可等は21日前まで。届出は募集を開始する月の10日前まで
- 報酬の認可基準: 報酬が支払われた賃金額の50%(1年を超えて雇用される場合は1年間の賃金額の50%)を超えるときは、特段の事情がある場合を除き認可しない
- 届出の有効期間: 最長1年。1年を超えて行う場合は1年ごとに届け出る
このほか、労働条件の明示(法5条の3)、個人情報の取扱い(法5条の4)、認可を受けた額を超える報酬の禁止(法40条)、募集に応じた労働者から報酬を受け取ることの禁止(法39条)などが定められています(出典: 厚生労働省「募集・求人業務取扱要領 Ⅲ 委託募集」)。
スカウト行為と職業紹介の関係は?
厚生労働省の要領は、求職者を探して就職を勧め、応じた人をあっせんする「スカウト行為」を事業として行う場合は、職業紹介事業に含まれるとしています。該当箇所の原文は次のとおりです。
求人者に紹介するため求職者を探索した上当該求職者に就職するよう勧奨し、これに応じて求職の申し込みをした者をあつせんするいわゆるスカウト行為を事業として行う場合は職業紹介事業に含まれるものであり、当該事業を行うためには、職業紹介事業の許可を取得する必要がある
要領は、この考え方の背景として、最高裁判所の判決(最判平成6年4月22日、東京エグゼクティブ・サーチ事件)を挙げ、「人材スカウト行為についてきわめて広く職業紹介性が認められている」と述べています。
同じ箇所で要領は、職業紹介事業の許可を持つ事業者に募集を委託する場合について、「当該職業紹介事業者に求人を申し込んだものと解することが適当であり、委託募集の許可は基本的には不要である」としています(出典: 厚生労働省「募集・求人業務取扱要領 Ⅲ 委託募集」)。
スカウト代行の関わり方で整理する
スカウト代行と一口にいっても、代行会社の関わり方はさまざまです。どの制度との関係を考えるべきかは、「誰の名義で送るか」「誰が候補者を選び、誰が採否を決めるか」「報酬は何に対して払うか」で変わります。
| 確かめる点 | 考える内容 |
|---|---|
| 送信の名義とアカウント | 企業の名義・企業の媒体アカウントで送るのか、代行会社の名義で送るのか |
| 代行会社の役割 | 文面作成や送信操作の代行なのか、候補者と企業の間に立ってあっせんするのか |
| 採否の判断 | 面談・選考・採否の判断を、企業が自ら行うのか |
| 報酬の形 | 月額・通数・面談・採用のどれに対して払うのか |
これらの組み合わせで、委託募集の許可・届出、職業紹介事業の許可のどれが関係しうるかが変わります。自社の契約がどれに当たるか、許可や届出が必要かは、契約の内容と運用の実態を踏まえて、社会保険労務士・弁護士、または管轄の労働局に確認してください。
媒体の利用規約も確かめる
法令とは別に、スカウトを送る媒体の利用規約も確かめます。アカウントを契約しているのは企業なので、規約を守る責任も企業にあります。
規約で確かめておきたいのは、次のような点です。
- アカウントを、社外の者(代行会社)と共有して操作してよいか
- スカウトの作成や送信に、AIや自動化の仕組みを使ってよいか
- 送信数や送信の頻度に上限・制限があるか
- 候補者の情報を、媒体の外に持ち出してよいか
扱いは媒体ごとに異なり、改定されることもあります。この記事では媒体ごとの可否は扱いません。契約している媒体の最新の規約で確かめ、不明な点は媒体の窓口に問い合わせてください。
スカウト代行を使う企業が確認すること
スカウト代行を使う前に、企業側で確認しておきたいことを一覧にします。
- 送信は自社の名義・自社のアカウントで行うのか
- 代行会社が担う範囲(文面作成・送信操作・返信対応・日程調整・設計の助言など)
- 面談・選考・採否の判断を自社で行う流れになっているか
- 報酬の形と、委託募集の許可・届出、職業紹介事業の許可との関係(専門家に確認)
- 媒体の利用規約で、アカウントの共有・AIや自動化の利用が認められているか
- 労働条件の明示が、スカウトや面談の案内で適切に行われているか
- 候補者の個人情報の扱い(代行会社への委託、さらにその先への委託の有無)
- 契約書で、法令・規約への適合の責任がどちらにあるか
費用の形の違いはスカウト代行の費用相場と料金体系、運用の全体像はダイレクトリクルーティングとはで解説しています。報酬の形(面談ごと・採用ごと)の具体例はPINSCOUTの料金で確かめられます。
職種によっては、確かめる点が増えます。たとえばドライバー・物流や看護・介護の募集では、勤務時間や夜勤などの労働条件を、スカウトの段階から正確に示すことが特に大切です(法5条の3)。
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