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採用単価の平均は、どの統計で分かるか

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KEY POINTS — この記事の要点

  • 採用単価は、採用にかかった費用の総額を採用した人数で割った1人あたりの費用で、分子に社内の工数を含めるかで値が変わる。

  • 厚生労働省の委託調査(令和3年6月)の正社員1件あたりの平均採用コストは、紹介会社85.1万円、スカウトサービス91.4万円、求人情報サイト28.5万円。

  • この調査の採用コストは採用手段別・雇用形態別で、職種別の値は無い。自社と比べるときは雇用形態・手段・費用の範囲・期間をそろえる。

採用単価とは何か

ANSWER

採用単価とは、採用にかかった費用の総額を、採用した人数で割った「1人あたりの費用」です。採用コスト、1人あたり採用コストとも呼ばれます。

採用単価は、手段や年度の違う採用を、同じ物差しで並べるための数字です。式は単純ですが、分子の「費用の総額」に何を入れるかで値が大きく変わります。

費用は、外に払う費用と、社内でかかる費用の2つに分けて考えます。

  • 外部の費用: 紹介会社の手数料、求人広告の掲載料、スカウト媒体の利用料、代行会社への支払い
  • 社内の費用: 面接官や人事担当者の時間、会社説明会の会場、採用サイトの制作と運用

公表されている平均の多くは、どちらを含むかを示していません。後で述べるとおり、厚生労働省の調査も同じです。自社の数字を出すときは、まず外部の費用だけで1回出し、社内の費用を足した数字を別に持つと比べやすくなります。

自社の採用単価は、採用単価の計算ツールで外部の費用と社内の工数を分けて出せます。入力した数字だけで計算し、統計の値は使いません。

厚労省の統計で分かる採用単価の平均は?

ANSWER

厚生労働省の委託調査(令和3年6月)では、正社員1件あたりの平均採用コストは紹介会社で85.1万円でした。スカウトサービスは91.4万円、インターネットの求人情報サイトは28.5万円です。

出典は、厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」です。令和3年度の委託調査で、令和4年3月にまとめられました。求人企業への調査のうち、図表IV-14が正社員、図表IV-15が非正社員の値です。

採用手段別の1件あたりの平均採用コスト(万円)と回答数
採用手段正社員の平均回答数非正社員の平均回答数
民間職業紹介事業者(紹介会社)85.1n=17519.2n=56
スカウトサービス91.4n=5144n=5
インターネットの求人情報サイト28.5n=25410.8n=149
インターンからの就職12.4n=142.7n=3
求人情報誌・チラシ11.3n=1137.7n=115
委託募集10n=47n=1
新聞広告・屋外広告7.1n=184.5n=14
インターネットの求人情報まとめサイト6.4n=393.2n=33
知り合い・社員等からの紹介(縁故)4.4n=993.4n=67
自社HP等からの直接応募2.8n=1502.7n=64
特別の法人等(地方公共団体、商工会議所、ナースセンター等)1n=123.2n=6
SNS0.9n=150.2n=17
アウトプレースメント0n=2—n=0
短期バイトのマッチングアプリ—n=02.3n=3
採用手段別の1件あたりの平均採用コスト(万円)と回答数(令和3年6月16日〜30日の調査)。正社員の平均の高い順に並べ替えた。非正社員はパート・アルバイト等の直接雇用。回答数が0件の平均は「—」。ハローワークは、この設問の選択肢に無い。出典: 厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」(令和3年度厚生労働省委託調査、令和4年3月)

正社員の平均が高いのは、スカウトサービスと紹介会社の2つです。どちらも80万円を超え、求人情報サイトの3倍前後になります。縁故・自社HP・SNSは、正社員でも5万円未満でした。

非正社員は、どの手段でも正社員より低い値です。紹介会社は19.2万円で、正社員の4分の1以下でした。スカウトサービスの非正社員(44.0万円)は回答が5件しかなく、報告書も注意を付けています。

回答が10件に満たない手段は、平均が数社の回答で決まります。表の値は記録として載せていますが、自社と比べる対象には使わないでください。報告書が注意を付けた手段は、正社員ではアウトプレースメントと委託募集の2つです。非正社員では、スカウトサービス・特別の法人等・委託募集・短期バイトのマッチングアプリ・インターンからの就職の5つでした。

その平均は、何の平均か

ANSWER

この平均は、令和3年6月に回答した企業が、採用手段ごとに書いた「採用1件あたりの採用コスト」の集計です。費用に何を含めるかは、各社の判断に任されています。

数字を引用したり自社と比べたりする前に、次の4点を押さえておきます。

項目報告書と調査票に書かれていること
調査の時点求人企業への調査は令和3年6月16日〜6月30日。採用手段は「過去1年間に求人を出した手段」から選ぶ形
母集団民間のデータベース会社の法人データから12,800社を無作為に抽出し、有効回答は1,142社。回答企業の概要の節は、過去3年間に人材サービスを使った企業(561社)を集計している
費用の範囲調査票の問4は「採用1件あたりの採用コスト」を万円の整数で書かせる。1万円未満は「0」と書く指示がある。外部の費用だけか、社内の工数を含むかの定義は無い
平均の出し方企業ごとの回答をどう平均したか(単純な平均か、採用数で重みを付けたか)は、確かめた範囲では書かれていない

回答した企業の規模にも注意が要ります。従業員数の中央値は26人、正社員の中央値は19人でした(同じ報告書の図表IV-4)。大企業の採用の平均として読むと、実態からずれる可能性があります。

もう1つは時点です。調査は令和3年で、その後の求人倍率や紹介手数料の動きは入っていません。紹介手数料が何で決まるかは、人材紹介の手数料の相場と比べ方で整理しています。

平均だけを見てはいけない理由

ANSWER

紹介会社とスカウトサービスは、回答の幅が大きい手段です。0万円と答えた企業が2〜3割いる一方で、100〜149万円の企業も2割強いました。

報告書は平均と一緒に、金額の幅ごとの割合を帯グラフで載せています。正社員の主な値は次のとおりです。

  • 紹介会社: 0万円が21.1%、50〜99万円が21.7%、100〜149万円が23.4%、150〜199万円が10.9%
  • スカウトサービス: 0万円が29.4%、50〜99万円が17.6%、100〜149万円が23.5%
  • インターネットの求人情報サイト: 0万円が19.7%、9万円以下が19.3%、50〜99万円が14.2%

0万円には、1万円未満の回答が含まれます。なぜ0万円なのかは、調査票からは分かりません。回答が低い側と高い側に分かれていると、平均はどちらにも当てはまらない値になります。

スカウトサービスの91.4万円も同じです。調査票は「スカウトサービス」の中身を定めていません。媒体の利用料だけの回答と、代行への支払いを含む回答が混ざっている可能性があります。スカウト代行の料金の型ごとの幅はスカウト代行の費用相場に、会社ごとの公開料金はスカウト代行の料金体系別の比較にまとめています。

職種別の採用単価は分かるか

ANSWER

この記事で確かめた2つの資料には、職種別の採用単価は載っていません。厚労省の報告書が職種別に集計したのは、求人を出した手段の割合だけです。

確かめた範囲は次のとおりです(2026年11月3日に原文で照合)。

  • 厚労省の報告書の求人企業調査: 図表IV-1〜IV-40の題と、調査票の問3・問4。採用コストは問4(図表IV-14・IV-15)だけで、分け方は採用手段と雇用形態の2つ
  • 同じ調査の職種別の表(図表IV-12・IV-13): 管理的職業・事務・販売など11の職業ごとの、求人を出した手段の割合。費用は無い
  • 就職白書2019の発表資料: 採用コストは従業員規模別と業種別だけで、職種別は無い

ほかの公的資料に職種別の値が無いとまでは言えません。上の範囲の外は、確かめていません。「職種別の採用単価の平均」として出回っている数字は、出典の調査の対象と数え方を確かめてから使ってください。

職種による採りにくさは、費用ではなく求人倍率で見る方法があります。厚労省の職業別の数字は職種別の有効求人倍率にまとめました。エンジニアや施工管理のように、職種ごとに採り方を変える必要もあります。施工管理の採り方は施工管理の採用が難しい理由と、採用の方法で解説しています。

民間の調査の数字(参考の表)

ANSWER

民間の調査では、『就職白書2019』(リクルートキャリア)が2018年度の値を出しています。1人あたりの平均採用コストは新卒72.6万円、中途84.8万円です。厚労省とは時点も対象も違うので、並べて比べません。

就職白書は、新卒採用を実施している従業員5人以上の企業4,522社に郵送で尋ねた調査です(回収1,307社)。採用コストは「参考として掲載」とされ、回答は企業が書いた実数です。採用手段別ではなく、新卒と中途の別に1人あたりの値を出しています。

『就職白書2019』の1人あたりの平均採用コスト(万円)。民間の調査
区分新卒採用回答数中途採用回答数
全体72.6N=56584.8N=481
300人未満65.2N=13863.6N=124
300〜999人80.2N=21283N=182
1000〜4999人72.9N=164108.5N=136
5000人以上59.9N=5178.5N=39
建設業69.4N=4797.8N=39
製造業69.7N=180102.3N=159
流通業67.7N=13255.5N=99
金融業84.8N=3058.2N=23
サービス・情報業78.1N=17586.8N=160
『就職白書2019』の1人あたりの平均採用コスト(万円)。民間の調査(2018年度の採用。調査は2018年12月〜2019年1月)。2018年度に新卒・中途の採用を実施した企業の実数回答。規模と業種は従業員数・業種の区分。無回答を除いて集計。出典: リクルートキャリア 就職みらい研究所『就職白書2019』発表資料(2019年2月25日)

厚労省の表と並べない理由は3つあります。

  1. 時点が違う。就職白書は2018年度の採用、厚労省は令和3年6月時点の過去1年
  2. 対象が違う。就職白書は新卒採用を実施している企業で、厚労省は無作為に抽出した法人
  3. 単位が違う。就職白書は手段を問わない1人あたり、厚労省は採用手段ごとの1件あたり

中途の84.8万円と、厚労省の紹介会社の85.1万円は近い値です。ただ、上の3つが違うので、たまたま近いとしか言えません。民間の調査を引くときは、調査名と年度を必ず添えてください。

自社の採用単価と比べてよい条件

ANSWER

厚労省の平均と比べてよいのは、雇用形態・採用手段・費用の範囲(外部の費用だけ)・期間(1年分)の4つをそろえたときです。そろわなければ、自社の前年と比べます。

まず、自社の採用単価を手段ごとに出します。手順は次のとおりです。

  1. 過去1年に採用した正社員を、入社の経路(紹介会社・求人サイト・スカウトなど)で分ける
  2. 経路ごとに、外に払った費用を合計する(手数料・掲載料・媒体の利用料・代行の支払い)
  3. 経路ごとの費用を、その経路で採用した人数で割る
  4. 面接や日程調整にかけた社内の時間は、別の列に分けて持つ

計算は採用単価の計算ツールでできます。社内の工数を分けて出せるので、外部の費用だけの値と、両方を足した値の2つが手元に残ります。

比べるときの条件は、次の表のとおりです。

そろえること理由
雇用形態(正社員か、非正社員か)紹介会社では、正社員と非正社員の平均に4倍以上の差がある
採用手段手段で平均が1万円未満から90万円台まで開く。全体の1つの値と比べても意味が薄い
費用の範囲統計の側は社内の工数を含むか不明。外部の費用だけの値で比べる方がずれが小さい
期間調査は過去1年の採用。数か月分だけだと、1件の高い採用で平均が大きく動く
回答数統計の側の回答が10件未満の手段(表の n を見る)は、比べる対象から外す

次の数字は、比べ方を示すための仮の数字です。

  • 紹介会社で正社員を2人採り、手数料の合計が200万円 → 1人100万円。統計の紹介会社(85.1万円)と比べられる
  • スカウト媒体の年間の利用料が120万円で、正社員を3人採った → 1人40万円。統計のスカウトサービスと比べられるが、中身の定義が無いので目安にとどめる
  • 手段を分けずに全体で1人60万円 → 統計のどの行とも比べない。前年の自社の値と比べる

統計より高かったとしても、すぐに悪いとは言えません。統計は令和3年の、比較的小さな企業が多い回答です。採りにくい職種や高い年収の求人なら、上に出るのが自然です。

手段ごとの単価が出たら、次は費用が発生する時点を見ます。スカウトの外注では、月額で払うか、成果が出たときに払うかで、採れなかった月の費用が変わります。払い方の違いは成果報酬型スカウト代行の選び方で比べています。スカウト文そのものの書き方は、職種別の営業職のスカウトメールの例文などを参考にしてください。

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出典

SOURCES — この記事の出典

厚労省の報告書で照合したのは、図表IV-14(本文91ページ)・IV-15(92ページ)・IV-4(79ページ)です。資料編の調査票の問4(184ページ)も原文で確かめました。就職白書2019は、発表資料の11ページです。

FAQ

よくある質問

厚生労働省の調査の「平均採用コスト」には、社内の人件費も含まれますか?
定められていません。調査票の問4は「採用1件あたりの採用コスト」を万円の整数で書かせるだけで、何を含めるかは回答した企業の判断です。自社と比べるときは、外に払った費用だけの値を使う方がずれが小さくなります。
スカウトサービスの平均91.4万円は、スカウト代行の料金の相場ですか?
そうとは言えません。調査票は「スカウトサービス」の中身を定めていません。媒体の利用料だけの回答と、代行の支払いを含む回答が混ざっている可能性があります。回答は51件で、0万円と答えた企業が29.4%ありました。スカウト代行の料金の型ごとの幅は、スカウト代行の費用相場の記事で扱っています。
ハローワークの採用単価は、この調査で分かりますか?
分かりません。ハローワークは求人を出した手段の設問には選択肢がありますが、採用コストを尋ねた問4の選択肢には入っていません。
採用単価の平均は、何年ごとに見直すべきですか?
自社の値は、少なくとも年に1回、同じ手段・同じ費用の範囲で出し直すのが目安です。統計の側は調査の時点で止まっているので、古い統計と今年の自社の値を比べるより、自社の前年と比べる方が判断に使えます。