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経理の採用が難しい理由と、即戦力を採る方法

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KEY POINTS — この記事の要点

  • 2026年9月の「会計事務従事者」の有効求人倍率は0.55倍で、職業計の1.08倍を下回る(厚労省「一般職業紹介状況」、パートを含む原数値)。経理の難しさは人数ではなく、経験の範囲の一致にある。

  • 経理の即戦力は、年数や資格ではなく、日次・月次・年次・税務・連結と開示・統制のどの範囲を一人で回したかで決める。

  • 決算と申告の時期は候補者が動きにくい。法人税の申告の期限は、原則として事業年度の終わりの翌日から2か月以内。

経理の採用が難しい理由

ANSWER

経理の採用が難しいのは、応募者の数が足りないからではありません。御社が任せたい業務の範囲を、経験したことがある人が少ないからです。

公的な統計では、会計事務の仕事を探す人は求人より多くいます。それでも「募集しても採れない」という声が出るのは、次の3つが重なるためです。

  1. 経験の幅が人によって大きく違う: 同じ「経理3年」でも、仕訳の入力だけの人と、年次決算と申告まで持った人がいます。求人の要件と経歴の中身が合いにくい職種です。
  2. 制度の変化で、求める経験が増えた: インボイス制度と電子取引の保存の義務で、日々の確認の仕事が増えました。新しい運用を組んだ経験まで求める会社が多くなっています。
  3. 候補者が動ける時期が限られる: 決算と申告の時期は、今の職場を離れにくくなります。声をかける時期を誤ると、返事が後回しになります。

つまり経理の採用は、「人がいない」のではなく「合う人が見つからない」問題です。打ち手は、求人を増やすことより、範囲の定義と探し方の精度にあります。

求人倍率は1倍を下回る

ANSWER

2026年9月の「会計事務従事者」の有効求人倍率は0.55倍でした。同じ月の職業計は1.08倍で、数の上では求職者のほうが多い職種です。

有効求人倍率は、ハローワークの有効求人の数を、有効求職者の数で割った値です。1倍を下回ると、求人より仕事を探す人のほうが多いことを表します。

経理に近い職業分類の有効求人倍率
職業分類(厚労省の名称)2026年9月1年前(2025年9月)
会計事務従事者0.55倍0.62倍
一般事務従事者0.30倍0.32倍
事務従事者0.37倍0.41倍
職業計1.08倍1.10倍
経理に近い職業分類の有効求人倍率(2026年9月)。参考統計表6。全国・常用(パートタイムを含む)・原数値(季節調整なし)。1年前の値は2025年9月分の同じ表。「事務従事者」は大分類で、会計事務と一般事務はその下の中分類。職業の区分は平成21年12月改定の日本標準職業分類。出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)について」(2026年10月30日公表)

経理の仕事は、統計では「会計事務従事者」に入ります。総務や受付を含む「一般事務従事者」は0.30倍で、事務の中でもさらに求職者が多い分類です。

2026年9月の「会計事務従事者」は、有効求人が17,548件、有効求職者が31,845人でした。求人1件に対して、約1.8人が仕事を探している計算です。一般事務では、求人1件に約3.3人でした。

この数字から言えることと、言えないことを分けておきます。

  • 言えるのは、経理の仕事を希望する人は市場に多くいる、ということです。求人を出しても応募が全く来ない、という状況にはなりにくい分類です。
  • 言えないのは、その人たちの経験の範囲です。統計は職業の分類で数えており、月次まで・年次まで・連結まで、という区別はありません。
  • パートタイムを除いた値は0.52倍です。正社員に近い求人でも、倍率は1倍を下回っています。

ハローワークの求人と求職だけの数字で、民間の求人サイトや人材紹介は含みません。ほかの職種と並べた表と13か月の推移は、職種別の有効求人倍率にあります。

「即戦力」を業務の範囲で決める

ANSWER

経理の即戦力とは、御社が入社の初月から任せたい業務の範囲を、前の職場で一人で回した経験がある人です。年数や資格ではなく、範囲で決めます。

経理の業務は、下の段ほど上の段の経験を前提にする積み上げの形をしています。求人の要件を「経験3年以上」と書くと、どの段の人を求めているかが伝わりません。

FIG.01経理の業務の範囲を6段に分けた例。年次の決算から上を一人で回した経験が、即戦力かどうかの分かれ目になりやすい。

面談では、段ごとに「一人でやったか、補助だったか」を確かめます。問いの例は次のとおりです。

範囲一人で回せる人の目安面談で確かめる問い
月次締めの日程を自分で組み、試算表を出して説明できる月次の締めは何営業日でしたか。遅れたときは何が原因でしたか
年次決算整理の仕訳を起こし、決算書の数字を説明できる引当金や減価償却の計上は、誰が判断していましたか
税務申告書の作成か、税理士への資料の取りまとめを持っていた消費税の申告で、インボイスの確認はどこまで自分で見ましたか
連結・開示子会社の数字を集め、開示の書類の一部を書いた有価証券報告書のどの章を担当しましたか
統制・仕組み業務の流れを文書にし、システムを入れ替えた入れ替えの前と後で、締めの日数はどう変わりましたか

範囲を決めると、求める人の像が2つに分かれることにも気づきます。決まった運用を確実に回す人か、仕組みを作り直す人かです。同じ求人で両方を狙うと、どちらの候補者にも響きにくくなります。

資格は範囲の代わりになりません。日商簿記の級は知識の目安で、決算を一人で回した経験を示すものではないからです。資格の欄は「あれば望ましい」に下げ、範囲の欄を必須にすると、要件と経歴の照合が楽になります。

制度の変化で増えた経験

ANSWER

2023年10月1日にインボイス制度が始まり、電子取引のデータは電子のまま保存する義務があります。この2つの運用を組んだ経験は、経理の求人でよく求められる要件になりました。

経理の採用の要件に関わる決まりは、次の4つです。

決まり中身採用での意味
インボイス制度2023年10月1日から。仕入税額控除には、原則として登録された売手のインボイスの保存が要る受け取った請求書の登録番号や記載を確かめる仕事が増えた
電子取引の保存法人税の保存義務者は、電子で受け取った取引の情報を電子のまま保存する(電子帳簿保存法第7条)保存の方法と、社内の受け取りの流れを決めた経験が問われる
申告の期限法人税の確定申告は、事業年度の終わりの翌日から2か月以内(法人税法第74条)。延長の特例もある決算月の翌月から2か月は、経理の人が最も動けない時期になる
内部統制の報告上場会社などは、財務報告の体制の評価を事業年度ごとに報告する(金融商品取引法第24条の4の4)上場の準備に入る会社は、文書化と評価の経験者を探すことになる

どれも、日々の仕訳の正確さとは別の経験です。制度ができた後に運用を組んだ人は、手順書や受け取りの流れを作った経験を語れます。決まった手順を回していた人とは、話せる中身が違います。

要件にするなら、「インボイス対応の経験」と書くだけでは足りません。「受け取りの流れを決めた」「確認の手順を作った」「システムの設定をした」のどれかまで書くと、経歴との照合ができます。

申告の期限の延長の特例は、定款などで定時総会の時期を定めている会社が使えます。御社の決算の日程を求人に書くときは、延長を使っているかどうかも添えると、繁忙の時期が正確に伝わります。

決算の暦と、声をかける時期

ANSWER

経理の候補者に声をかけるなら、月初の締めの数日と、決算月の翌月からの2か月を避けます。返事を考える余裕がある時期に届くかどうかで、反応が変わります。

経理の1年は、月の締めと年の決算の2つの周期で動きます。3月決算の会社に勤める人の例で並べると、次のようになります。

  • 毎月の初め: 前月の締め。数営業日は、ほかのことに手が回りません。
  • 4月〜5月: 年次の決算と、法人税・消費税の申告。申告の期限は、原則として事業年度の終わりの翌日から2か月以内です。
  • 6月: 上場会社では有価証券報告書。提出の期限は事業年度の終わりから3か月以内(金融商品取引法第24条)で、開示の担当者はこの月まで動けません。
  • 7月〜翌2月: 中間の決算などはあるものの、比べると余裕が出る時期です。転職の相談に乗りやすいのはここです。

候補者の勤め先の決算月は、経歴から推し量れることがあります。上場会社なら決算月は公開されています。分からないときは、月の中旬から下旬に送ると、締めとの重なりを避けやすくなります。

入社の時期にも同じ考え方が要ります。決算の最中に退職を切り出すのは、候補者にとって重い判断です。入社日は今の職場の決算が終わった後に置く前提で、声をかけ始める時期を前に倒します。

採用方法の比べ方

ANSWER

経理の採用方法は、「範囲の合う人に届くか」と「費用がいつ出るか」の2つで比べます。応募を待つ方法は母数が多い一方で、範囲の照合を自社で行う手間が残ります。

求人倍率が1倍を下回る職種では、応募は集まりやすくなります。その分、書類で範囲を見分ける手間が増えます。人を雇わずに業務を外に出す道も、比べる候補に入ります。

方法費用の出方範囲の照合経理での使いどころ
求人サイト・ハローワークハローワークは無料。求人サイトは媒体ごとの掲載料など応募の書類を自社で読む日次・月次の担当を、地元から広く集める
人材紹介採用が決まったときに手数料紹介会社が要件と照らして推薦する年次・開示まで持つ1名を、急いで採る
紹介予定派遣派遣の期間は派遣料金、直接雇用のときに紹介の手数料最長6か月の派遣の間に、実務で確かめる範囲を実際の締めで確かめてから雇いたい
労働者派遣働いた時間に応じた派遣料金派遣会社が人を選ぶ。事前の面接で選ぶことはできない決算期だけの人手。同じ人は同じ組織で3年まで
スカウト媒体の利用料。代行に頼むなら、その料金経歴の範囲を読んで、合う人だけに送る転職を急いでいない、範囲の合う経験者に届ける
外部への委託記帳代行や税理士の顧問料など、委託の料金人の採用ではない社内に置く範囲を絞り、残りを外に出す

紹介予定派遣は、派遣の後に直接雇用することを予定した派遣です。厚生労働省の指針では、同じ人の派遣の期間は6か月を超えてはならないとされています。派遣の前の面接や履歴書の送付ができる点が、通常の派遣と違います。

通常の派遣には期間の制限があります。労働者派遣法では、同じ事業所で受け入れられる期間は原則3年で、組織単位ごとに同じ人を受け入れられるのも3年までです(第40条の2・第40条の3)。長く同じ人に任せたい範囲なら、直接雇用の方法を選ぶことになります。

人材紹介の手数料の決まりと比べ方は、人材紹介の手数料の相場で扱っています。どの方法でも、外部の費用と社内の工数を合わせると、採用1人あたりの額が出ます。採用単価の計算ツールで、方法ごとに並べて比べられます。

声をかける相手を広げる

ANSWER

事業会社の経理経験者だけを探すと、取り合いになります。会計事務所の出身者・上場準備の経験者・一般事務からの登用まで広げると、範囲の合う人が見つかりやすくなります。

経理の範囲に合う人は、経理の肩書きの人だけではありません。狙える層は少なくとも5つあります。

  1. 会計事務所・税理士法人の出身者: 多くの会社の決算と申告を見てきた人です。年次と税務の段は厚い一方、社内の締めの段取りは未経験のことがあります。
  2. 監査法人の出身者: 開示と内部統制の段に強い層です。上場の準備に入る会社と相性がよい一方、日々の仕訳の運用は別に確かめます。
  3. 規模の大きい会社の経理: 範囲は狭く深いことが多い層です。少人数の会社で範囲を広げたい人なら、任せる範囲の広さがそのまま動機になります。
  4. 社内の一般事務からの登用: 一般事務は求職者が多い分類です。月次の段から任せ、年次の段まで育てる道を作れば、採用と育成を分けて考えられます。
  5. 離職期間のある経験者: 育児などで離れていた経験者です。制度の変化の後の運用は、入社後に追いつく前提で、時間の柔軟さを示します。

層が決まったら、文面はその層の経歴に合わせて書きます。状況別の全文の例は経理・管理部門のスカウトメール例文にあります。書いた下書きはスカウト文の点検ツールで抜けを確かめられます。

CFOや経理部長など、部門を任せる人を探すなら、範囲より会社の段階との合い方が大切になります。経営幹部・管理職の採用の考え方も参考になります。

人数の取り合いで難しい職種もあります。ほかの職種の事情は施工管理の採用が難しい理由やドライバーの採用が集まらない理由で比べられます。職種ごとのページの一覧は職種別のスカウト代行にあります。

PINSCOUTで採る場合

ANSWER

PINSCOUTは、完全成果報酬のスカウト代行です。候補者が担当してきた業務の範囲を経歴から読み、御社で任せる範囲と合う人に1人ずつ書いて送ります。

出典

SOURCES — この記事の出典

FAQ

よくある質問

経理の有効求人倍率は何倍ですか?
厚生労働省「一般職業紹介状況」で、経理が入るのは「会計事務従事者」です。2026年9月は0.55倍でした(常用・パートを含む原数値)。パートを除くと0.52倍です。ハローワークの求人と求職だけの数字です。
求人倍率が低いのに、経理が採れないのはなぜですか?
統計は職業の分類で数えており、経験の範囲を区別しないからです。仕事を探す人は多くても、年次の決算や申告まで一人で回した人は限られます。求人の要件を範囲で書くと、合う人と合わない人を早く見分けられます。
経理の採用で、紹介予定派遣は使えますか?
使えます。派遣の間に実際の締めで範囲を確かめてから、直接雇用に切り替えられます。厚生労働省の指針で、同じ人の派遣の期間は6か月までです。直接雇用したときの紹介の手数料は、派遣会社との契約で決まります。
経理の候補者にスカウトを送る時期はいつがよいですか?
月初の締めの数日と、決算月の翌月からの2か月を避けます。3月決算の会社に勤める人なら、7月から翌年2月が比べて余裕のある時期です。決算月が分からなければ、月の中旬から下旬に送ります。